生産者とのつながり vol. 7
秋田県にかほ市
六平 真(酌屋六三五)
【つながり 〜飲食人〜】
秋田県にかほ市生まれ
季節の地元食材を使った繊細な味のおまかせ料理(3,500円〜)が堪能できる。秋田のこだわりの日本酒を常時25種類以上。生ビールも日本酒も最高の品質で楽しめるお店。
レメデの二人も足繁く通う名店(or 迷店?)。
店名:酌屋六三五
営業時間:17:30~22:30(日曜定休)
住所:〒018-0402 秋田県にかほ市平沢天ケ町34−1
電話番号:0184362985
今回取材した六平さんの人柄も伝えたかったので、少しだけ訛りを残した話し言葉の文章にしました。
山菜採りを始めたきっかけは?
おんぶされている頃から(笑)。
小さい自分を家さ置いて行っても面倒を見る人がいなかったから、親に背負われながら山さ連れて行ってもらってだな。
親父は今でも「お前が小さい時は山しか連れて行かなかったなぁ」って言ってるしな。
その頃から山菜の採り方とか食べ方を教えてもらってたけど、中学から社会人になるまでは、山さ入ることはほぼながったですね。独立して自分のお店を持つようになってからは、自分で採った山菜をお客さんに食べてもらいたいと思って、また本格的に山菜採りに行くようになったっすね。
最近また親父と山さ入る機会が増えてきました。親父はまだ俺に教えていないスポットとか自分の持ってる知識を託したいんだろうな。生前贈与だべが(笑)。
そんな山菜採りのベテランの六平さんでも、山に入る時に気を付けていることはありますか?
まず、「山に入ること自体が危ない」というのを忘れないこと。
だから、非常時の備えは万全にして山さ入っています。
ゴミ袋はいざとなったら雨が降った場合に防水対策として役立つし、防寒具としても使える。非常食や飲み物も多めに持っていくようにしてます。
沢の近くは美味しい山菜が生えてて、見つければ夢中になって採りに行ってしまうけど、そういうところは滑りやすいからスパイク付きの長靴でないとだめ。滑って転んで、頭を打って動けなくなる人も多い場所だがら、気をつけだほうがいい。
夢中になっていると、自分のいる場所とか足場の状態が分からなくなるからな。
慣れている人であれば、こっちさ行けば岩場だとか、あっちさ行けば沢だとか頭さ入ってるけど、山歩きに慣れているうちの親父だっていまだに迷子になる時もあるし(笑)。
特に笹藪や背の高い竹藪に入ってしまうと方向感覚を失ってしまう場合もあるから、山さ入る前には、GPSで現在地をチェックしてから入るようにしてます。
山菜を採ることへのこだわりは?
山菜は、あるからといって全部採るのではなく、来年のこともちゃんと考えて採るようにしています。
採りすぎてもだめ。
だけど、全く採らないのもだめ。
山は、適度に人が入らないと荒れてしまうし、山を持続可能な状態に保つため、山菜を採るだけでなく、山の風景やその自然を知ることも重要。
こっからの景色最高だべ!
にかほの自然は自分にとっての遊び場。ここを守っていくのも自分の使命だと思ってます。
山菜採りの生産者としてだけでなく、酌屋六三五の店主としても話を聞きました。
飲食業を始めたきっかけは?
高校の時に寿司屋でアルバイトをしたのがきっかけ。そのアルバイトが面白くて学校よりもバイトの方が楽しかった。「ご馳走様!」って言ってくれるお客さんの表情とかな。
お客さんに喜んでもらえたり、自分が頼りにされることがすんげぇ嬉しくて。
料理好きの母親の影響もあってか、昔から料理は好きで作ってました。
子供の頃から遊びに行くといえば山か海。一度サッカー部に入ったけど途中でやめて。
釣りが好きで、小3くらいからかな?学校が終われば一人で毎日海さ行って釣りして遊んでました。母親から小麦粉をもらって、ナイフを持って山さ竹を切りに行って釣り竿を作って。それで釣った魚を母親に料理してもらってました。
地元で長いこと愛されてる酌屋六三五ですが、振り返ってみてどうですか?
今年で16年目に入るけど、まあオリンピック並に大変なことも色々あったな(笑)。
リーマンショックの年に開店して、東日本大震災、その後コロナ。コロナなんて、夏と冬のオリンピック同時開催だよ(笑)。
開店当初は従業員を使ってアラカルトのメニューもたくさん用意してたけど、仕込みが大変で遊ぶ時間も取れなかった。定休日の日曜日でも仕込みをする必要があったから、家族にも迷惑をかけていたし。
今は、ワンオペでおまかせ料理を提供するようになって、時間を有効活用できるようになったし、来てくれたお客さん一人一人と喋る時間が増えて、より楽しませられるようになったと思う。
お客さんが帰った後の一人で洗い物をしている時間はやけに虚しいものはあるけどな(笑)。
山のことだけじゃなく、自分も持続可能なスタイルにしていくことができているかなと思う。
今後の展望や夢は?
山菜の食文化を残すために、山菜を採るだけでなくその食べ方や料理方法も伝えていきたい。
俺がそれをやることによって、次の世代に山菜の価値や美味しさを伝えることができる。食文化を守りながら、山菜を含む地域の自然や生態系を守ることにもつながる。
やっぱり、お客さんには「本物の味」を伝えたい。食材のストーリーも知ってもらいたいというか。
最近、にかほにも同世代の飲食人が増えてきたし、お互いに情報交換しながら、にかほの良い食材に俺らの想いものせて、みんなで「本物の味」をお客さんに伝えていけたらいいなと思う。
最後に、今後のレメデニカホに期待することは?
俺らみたいに飲食人同士がつながって、こういう輪をどんどん広げていければなと思う。
で、一緒に、山菜以外にもにかほの魅力ある食材や素晴らしい風景・文化もお客さんに伝えていけたら嬉しい。
俺が今ひそかに育てている山椒とか柚子とかもな!あの場所は内緒だがらな(笑)。
Interview&Text:KENICHI WATANABE, KIYOKA MURAKAMI(Remède nikaho)
Photograph:YASUFUMI ITO(Creative Peg Works)
Produce:TEPPEI HORII(PILE inc.)